飲食店を経営するうえで「原価率」は利益を左右する重要な指標です。
「売上は伸びているのに利益が残らない」「食材費が高騰して経営が苦しい」「原価率は何%が理想なのかわからない」といった悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
特に近年は食材価格や光熱費、人件費の上昇が続いており、以前と同じ感覚で経営を続けているだけでは利益を確保することが難しくなっています。
しかし、原価率は単純に「低ければ良い」というものではありません。
利益を増やすためには、原価率の考え方を正しく理解し、自店舗に合ったバランスで管理することが重要です。
ここでは飲食店における原価率の基本から適正な目安、利益を増やすための考え方、そして今日から実践できる改善方法を考えていきましょう。
原価率とは?
原価率とは売上に対して食材原価がどれくらい占めているかを示す割合です。
計算方法は非常にシンプルです。
原価率(%)= 食材原価 ÷ 売上 ×100
例えば、
- 売上:100万円
- 食材原価:30万円
の場合、
30万円 ÷100万円×100=30%
つまり、この店舗の原価率は30%となります。
原価率は飲食店経営における重要な指標ですが、この数字だけを見て経営判断をするのは危険です。原価率だけでなく、人件費や家賃なども含めた全体のバランスを見る必要があります。
原価率が高いことは悪いことではない
「原価率が高い=経営が悪い」と考えてしまう方もいますが、必ずしもそうではありません。
例えば、高級寿司店や人気焼肉店では、質の高い食材を使用することで原価率が40%を超えることも珍しくありません。
それでも多くのリピーターを獲得し、高い利益を上げている店舗は数多く存在します。
高品質な食材を提供することで、
- 満足度が向上する
- リピーターが増える
- SNSで話題になる
- 客単価が上がる
といったメリットが期待できます。
つまり、「原価率を下げること」よりも、「原価以上の価値をお客様に感じてもらえるか」が重要なのです。
原価率が高くなる原因
原価率が上がった➡単純に「食材の価格が上がったから」と考えがちですが、実際には店舗運営のさまざまな要因が重なり、気づかないうちに原価率を押し上げています。
食材ロス
飲食店で原価率が上がる原因として最も多いのが「食材ロス」です。
例として下記のような要因が考えられます。
- 賞味期限・消費期限切れによる廃棄
- 仕込みすぎによる廃棄
- 売れ残りメニューの廃棄
- 調理ミスによる作り直し
- 落下や破損による廃棄
これらはすべて原価として発生しているにもかかわらず、売上にはつながりません。
例えば、5,000円分の肉を廃棄した場合、その5,000円はそのまま利益の減少につながります。
特に閉店間際に大量の食材を捨てている店舗は、知らないうちに年間数十万円〜数百万円もの損失を出しているケースも少なくありません。
発注ミス・在庫管理不足
適切な在庫管理ができていない店舗では、必要以上に食材を仕入れてしまうことがあります。
「念のため多めに注文した」
「冷蔵庫にあると思っていた」
「複数人が同じ食材を発注してしまった」
こうした感覚で発注をする管理者では食材ロスや原価の悪化につながります。
特に在庫管理を紙や記憶だけで行っている店舗では発注ミスが起こりやすくなります。
在庫を定期的に棚卸しし、POSレジや在庫管理システムを活用することで、無駄な仕入れを防ぐことができます。
必要以上に仕入れてしまうことで食材が余り、廃棄につながります。
ポーション(盛り付け量)が統一されていない
スタッフごとに盛り付け量が異なる店舗では商品の品質だけでなく原価率にもばらつきが生じます。
対策としては
- デジタルスケールを使用する
- ディッシャーや計量スプーンを活用する
- 盛り付け写真を共有する
- マニュアルを作成する
など、誰が調理しても同じ品質になる仕組みづくりが重要です。
スタッフごとに盛り付け量にバラつきが出てしまうと、知らないうちに原価率が上昇します。
原材料価格の高騰
近年、多くの飲食店が直面しているのが原材料価格の高騰です。
- 米
- 野菜
- 肉類
- 魚介類
- 食用油
- 調味料
など、多くの食材が以前より高騰しています。
しかし、食材価格が上がっても販売価格を据え置いている店舗も少なくありません。
このような場合、売上は変わらなくても利益は確実に減少してしまいます。
原材料価格は定期的に確認し、必要に応じてメニュー価格や内容を見直すことが重要です。
メニュー価格が適切ではない
オープン当初に設定した価格を長年変更していない店舗も少なくありません。
しかし、食材費や光熱費、人件費は年々変動しています。
価格を据え置いたままでは、利益率が少しずつ下がってしまいます。
もちろん、安易な値上げはお客様離れにつながる可能性もありますが、
- セットメニューを充実させる
- 盛り付けを工夫する
- 接客やサービスの質を高める
など、価格以上の価値を提供できれば、お客様の満足度を維持しながら適正な価格設定が可能になります。
食材価格が上がっているにもかかわらず価格改定を行わないと利益率は徐々に悪化します。
原価率が高くなる原因は1つではない
原因を一つずつ洗い出し改善を積み重ねることが重要です。
上記をチェックリストとして日々管理するとブレにくくなるでしょう。
特別な設備投資をしなくても、日々の発注方法や在庫管理、メニュー構成を見直すだけで、原価率は改善できる可能性があります。
利益が思うように残らないと感じたら、まずは自店舗の原価率が高くなっている原因を把握することから始めてみましょう。
原価率を改善する方法
原価率を改善するために「安い食材に変更する」「料理の量を減らす」と考える方もいます。
しかし、このような方法は料理の品質やお客様満足度の低下につながり、結果として売上が落ちてしまう可能性があります。
原価率の改善とは単に食材費を削減することではなく、「無駄を減らしながら利益を最大化すること」です。
食材ロスを徹底的に減らす
原価率改善で最も効果が大きいのが、食材ロスの削減です。
食材は仕入れた時点でコストが発生しています。
そのため、売れずに廃棄した食材は100%利益を失っているのと同じです。
例えば、毎日2,000円分の食材を廃棄している場合、
- 1日:約2,000円
- 1か月:約6万円
- 年間:約72万円
もの利益を失っている計算になります。
食材ロスを減らすためには次のような取り組みが効果的です。
- 先入れ先出しを徹底する
- 消費期限を毎日確認する
- 売上予測に合わせて仕込み量を調整する
- 売れ残りが多いメニューを見直す
- 食材を使い切れるレシピを考える
「捨てる食材を減らすこと」は、最もコストパフォーマンスの高い利益改善策と言えます。
ポーション(提供量)を標準化する
料理の盛り付け量にばらつきがあると、知らないうちに原価率は上昇します。
例えば本来100gで提供するはずの肉を110g盛り付けてしまうと、一皿ではわずかな差でも、1日100食販売すれば1kgもの余分な食材を使用することになります。
これが毎日続けば、年間では大きなコスト増加になります。
そのため、
- デジタルスケールで計量する
- ディッシャーやレードルを使用する
- 盛り付け写真をマニュアル化する
- スタッフ教育を定期的に行う
これらを徹底する事で理論原価からブレが少なくなります。
ABC分析で利益率の高いメニューを伸ばす
飲食店では「よく売れる商品」と「あまり売れない商品」が必ず存在します。
そこで活用したいのが「ABC分析」です。
例えば、
- Aランク:売上・利益ともに高い人気商品
- Bランク:安定して売れている商品
- Cランク:ほとんど注文されない商品
というように分類することで、改善すべきポイントが見えてきます。
Aランクの商品はさらに目立つ位置に掲載し、Cランクの商品は改良や販売終了を検討することで、店舗全体の利益率を高めることができます。
POSレジを導入している店舗であれば、販売データを活用して効率よく分析できるでしょう
仕入れ先を定期的に見直す
「開業以来ずっと同じ業者だから」という理由だけで仕入れ先を固定していませんか?
同じ品質の食材でも、仕入れ先によって価格や配送条件が異なる場合があります。
そのため、
- 年に1〜2回は見積もりを取る
- 地元業者と全国業者を比較する
- まとめ買いによる割引を確認する
- 配送料や最低注文金額も比較する
など、定期的に見直すことが大切です。
ただし、価格だけで判断するのではなく「品質」「納品の安定性」「急な注文への対応力」なども含めて総合的に判断しましょう。
また、商品によって業者を使い分けできるなどするとより原価の改善が見込めます。
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メニュー価格を見直す
近年は食材費や物流費、人件費の上昇により、以前と同じ価格設定では利益を確保しにくくなっています。
それにもかかわらず、「値上げをするとお客様が離れるのではないか」と不安を感じ、価格を据え置いている店舗も少なくありません。
しかし、品質を維持しながら適切な価格改定を行うことは、健全な店舗経営には欠かせません。
値上げを実施する際は、
- 新メニューと同時に価格を見直す
- 食材や品質へのこだわりを伝える
- セットメニューや期間限定メニューを活用する
- 接客の質を上げる
- 衛生面をより強化する
など、お客様に価格以上の価値を感じてもらえる工夫を行うことで、理解を得やすくなります。
POSレジや在庫管理システムを活用する
原価率を継続的に改善するためには「感覚」ではなく「データ」で経営することが重要です。
POSレジや在庫管理システムを導入すると、
- 商品ごとの売上分析
- 利益率の確認
- 食材使用量の把握
- 在庫状況の確認
- 発注量の最適化
などを効率よく管理できます。
数字をもとに問題点の抽出、改善を繰り返すことで利益率の高い店舗運営につながります。
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原価率は一度改善すれば終わりではありません。
食材価格やお客様のニーズ、市場環境は常に変化しています。
そのため、毎月原価率やFLコストを確認し、
- 売れ筋商品の変化
- 食材ロスの増減
- メニューごとの利益率
- 発注量の適正化
などを継続的に見直すことが大切です。
日々の小さな改善を積み重ねることが、長期的な利益向上と安定した店舗経営につながります。
原価率を下げるだけでは危険
原価率は一度改善すれば終わりではありません。
食材価格やお客様のニーズ、市場環境は常に変化しています。
そのため、毎月原価率やFLコストを確認し、
- 売れ筋商品の変化
- 食材ロスの増減
- メニューごとの利益率
- 発注量の適正化
などを継続的に見直すことが大切です。
日々の小さな改善を積み重ねることが、長期的な利益向上と安定した店舗経営につながります。
品質を下げると目先の利益は増えても長続きしない
原価率を下げるために、
- 安価な食材へ変更する
- 肉や魚の量を減らす
- 野菜の品質を落とす
- ドレッシングやソースの量を減らす
といった方法を選ぶ店舗もあります。
しかし、お客様は意外なほど細かな変化に気づくものです。
「以前よりボリュームが減った気がする」「味が変わった」「満足感がなくなった」と感じれば、再来店の可能性は低くなります。
飲食店は一度きりのお客様だけで成り立つビジネスではありません。
常連のお客様やリピーターに支えられているからこそ、安定した経営ができます。
短期的な利益だけを追い求めて品質を落としてしまうと、長期的には売上の減少という大きな代償を払うことになりかねません。
「看板メニュー」は原価率が高くても問題ない
すべてのメニューで同じ原価率を設定する必要はありません。
戦略として多くの人気飲食店では「利益を取る商品」と「集客する商品」を明確に分けています。
ラーメン店であれば、看板ラーメンの原価率は高めでも、
- トッピング
- サイドメニュー
- ドリンク
などで利益を確保するケースもあります。
居酒屋でも、お刺身の盛り合わせは利益率が低くても、お酒や揚げ物、一品料理で利益を補うことも可能です。
看板商品は「利益商品」ではなく、「集客商品」として考えることが重要です。
「あの料理を食べたいから来店する」という商品があることで、お客様の来店動機が生まれ、結果的に店舗全体の売上アップにつながります。
原価率よりも「客単価」を上げるという考え方
利益を増やす方法は、原価率を下げることだけではありません。
例えば、お客様一人あたりの注文金額(客単価)を上げることで、利益を改善することもできます。
具体的には、
- セットメニューを提案する
- トッピングをおすすめする
- ドリンクやデザートを提案する
- 季節限定メニューを販売する
といった工夫です。
例えば、原価率の高いメイン料理だけを注文されるよりも、ドリンクやデザートを追加していただいたほうが、店舗全体の利益率は高くなるケースもあります。
そのため、「どうやって原価率を下げるか」だけでなく、「どうやってお客様にもう一品注文していただくか」という視点も非常に重要です。
FLコスト全体で利益を考える
飲食店経営では原価率だけを見るのではなく「FLコスト」という考え方が欠かせません。
FLコストとは、
- Food(食材費)
- Labor(人件費)
の合計を指します。
例えば、
A店舗
- 原価率:35%
- 人件費:20%
- FLコスト:55%
B店舗
- 原価率:28%
- 人件費:35%
- FLコスト:63%
この場合、原価率だけを見るとB店舗のほうが優秀に見えますが、実際には人件費が高いため、利益はA店舗のほうが残る可能性があります。
つまり、原価率だけを改善しても、人件費やその他の経費が増えていては意味がありません。
利益を改善するには、店舗全体のコストバランスを見ることが大切です。
「値下げ」より「価値を高める」ほうが利益は残る
価格競争に巻き込まれると、「もっと安く提供しなければ」と考えてしまいがちです。
しかし、多くのお客様は価格だけでお店を選んでいるわけではありません。
- 接客が丁寧
- 店内が清潔
- 盛り付けが美しい
- 提供スピードが早い
- 居心地が良い
こうした付加価値があれば、多少価格が高くても選ばれる店舗は数多くあります。
そのため、利益を残すためには、価格を下げることよりも、「この価格でも食べたい」と思ってもらえる価値を提供することが重要です。
原価率は「下げる」のではなく「最適化」する
利益を出し続けている飲食店は、原価率を極端に下げることを目標にはしていません。
大切なのは、
- 食材ロスを減らす
- 売れ筋メニューを強化する
- 適切な価格設定を行う
- 在庫管理を徹底する
- お客様満足度を維持する
といった取り組みを積み重ねながら、自店舗にとって最適な原価率を維持することです。
原価率は「低ければ良い指標」ではなく、「利益とお客様満足度のバランスが取れているか」を判断するための指標です。
数字だけを追いかけるのではなく、お客様に選ばれ続けるお店づくりを意識することが、長く利益を生み出す飲食店経営につながるでしょう。
原価管理に役立つシステムを活用しよう
最近ではPOSレジや在庫管理システムを導入することが主流で原価管理を効率化するのが当たり前になっています。
例えば、
- POSレジによる売上分析
- 在庫管理システム
- 発注システム
- 原価管理ソフト
などを活用すれば、食材の使用量や売れ筋商品の分析がしやすくなり、利益改善にもつながります。
特に複数店舗を運営している場合はデータを一元管理できるシステムを導入することで、経営判断のスピードも向上します。
原価率改善のポイントまとめ
飲食店経営では「原価率を下げること」が目的ではなく、「利益をしっかり残しながら、お客様に満足していただける価値を提供すること」です。
そのためには、
- 原価率だけでなくFLコストも確認する
- 食材ロスを減らす
- ポーションを統一する
- 売れ筋商品を分析する
- 適切な価格設定を行う
- POSレジや在庫管理システムを活用する
といった取り組みを継続することが大切です。
数字を「確認する習慣」を身につけるだけでも利益改善につながるヒントが見つかります。
飲食店を取り巻く環境は日々変化していますが、原価率を正しく理解し、利益を確保しながらお客様に長く愛されるお店づくりを目指しましょう。

